愛猫を迎えるより前の、ある年の夏、7月上旬のこと。家の駐車場に迷い込んだ野良の子猫を保護する機会がありました。大の猫好きである私(と夫)にとって、それは喜ばしいことのはずでした。
ここでは、野良子猫の保護から最終的な決断に至るまでの実際の体験談をまとめています。忘れられない思い出をこうして記事に残すことで、同じような境遇にいる方の助けになれば幸いです。
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直撃する台風に絶える子猫
夜も更ける頃、台風はピークを迎え、しばらくの間激しい雨風が子猫を襲いました。幸い、軒下に避難させておいた65cmプランターが子猫の緊急避難場所として活躍し、子猫が直接雨に打たれることはありませんでした。
また、進行速度が速かったことで思ったより台風の通過が早く、台風の目を超えたあたりから、一気に雨脚は弱まりました。深夜になると雨はぴたっと止み、暴風雨による落ち葉の残骸と土の香り、ときどき木々から落ちる雫の音だけが周囲に広がっていました。
台風が通り過ぎた後も子猫はプランターの裏から出てくる様子はなく、頭や尻尾の位置もわからないほど、黒い煤(すす)のようにきれいに丸まっています。
私たち夫婦はしばらく母猫の帰りを待ちつつ、家の中から子猫の様子を見守っていましたが、体力も限界に近付き、その日は窓のそばを離れて眠りにつきました。
台風一過、戻らぬ母猫
翌日早朝、外は快晴。野良猫親子の動向が気になり、起床後すぐに子猫の様子を確認すると、昨夜から隠れていたプランターの裏に変わらず子猫の姿がありました。しかし、周囲には母猫の姿は見当たりません。あの豪雨の中を駆けていったのにはどのような理由があったのでしょうか。残された子猫を心配するのと同時に、このときは何より母猫が無事であってほしいと願うばかりでした。
その日は子猫に餌と水を与え、母猫の戻りを待つことに。いつもならば子猫が残した餌を食べに後から母猫が現れていたのですが、このときばかりは母猫が現れる気配がありません。子猫は我が家の軒下周辺を離れる様子はなく、餌を食べるか物陰に隠れて寝ているかといった時間を過ごしていました。しかし、このまま母猫が現れないようでは確実にこの子猫は我が家に居着くことになります。私たち夫婦は、母親の戻りを待ちながら、しばし子猫の親役を買って出ることにしたのでした。
子猫の保護・飼育を決断
それから数日、母猫が戻ってくることはありませんでした。子猫は我が家の敷地周辺や駐車場など、自宅から見える位置にいることが多く、1匹でどこかへ行く様子もありません。あれから一度も母猫を求めて鳴きすらしないので、「もしかしたら私たちが気付かない間に母猫が様子を見にきているのでは?」と、使っていないスマートフォンで窓越しに外の様子を録画したこともありましたが、やはり母猫の姿はありません。
健康状態もわからない生後数ヶ月の子猫は、このままいけば外飼い状態。すぐ近くには交通量の多い車通りもあります。私たち夫婦は、数日間子猫に餌を与えて様子を観察し、家族に迎え入れることを決断しました。
野良子猫の捕獲~計画・準備~
子猫の保護を決断した日、近くの動物病院に野良猫を診てもらいたい旨を伝えました。野良猫は、ほぼ絶対といえるほどノミやダニをはじめとした寄生虫がいるため、連れて行く場合は周囲の患者さんへの配慮が必要です。動物病院によっては、事前の相談が必要な場合もあります。HPなどに何も記載されていなくても、前日までに連絡を入れておいたほうがスムーズに受け付けてもらえることが多いです。
わが家の近隣の動物病院は野良猫の診療を快くOKしてくれたため、捕獲当日はその足で動物病院へ向かう段取りにしました。可愛い子猫といえど、活発なノミ・ダニが寄生した状態で家の中に入れることに大きな抵抗があったためです。
それから必要なものを買いそろえて自宅に戻りました。このとき作成していた必要な道具の買い出しリストは、以下の通りです。
野良猫捕獲のための道具リストと目的
ペットキャリー
捕獲した子猫を入れるため。捕獲器と迷いましたが、だいぶ人慣れしていたことと、今後も使用できることからペットキャリーを選びました。
洗濯ネット
病院へ向かう際、捕獲した子猫が暴れる場合に使用します。
ペットシーツ
ペットキャリーの中で粗相をしてしまっても良いように。
焼き鰹(猫用おやつ)
すでにスキンシップが図れるほど人慣れした子猫でしたが、嗜好性抜群のおやつでとことん子猫の警戒を解くことが目的です。
革手袋
万が一、爪や歯を立てられてもケガを負わないように装着しました。
キャットケージ
無事家の中に入れられるようになった場合、子猫と人間の安全を考慮して、慣れるまでケージ飼育に決めました。
キャットフード
追加で購入しました(内容量は2kgを選びました)
猫砂・猫用トイレ・ウンチ取りのスコップ
必需品。もともと外で用を足している野良猫なので、鉱物系の安価な猫砂にしました。猫用トイレは100円ショップにある大きめの洗面器、スコップは子どもの砂遊び用のスコップで代用しました。
猫用爪とぎ
100円ショップにある段ボール製の爪とぎを購入しました。付属のマタタビは安全性が不明なため使用しませんでした。
猫用おもちゃ
遊んでくれるかは分からないけど期待を込めて。こちらも100円ショップで購入しました。
野良子猫の捕獲~捕獲当日~
捕獲当日、真夏日。夫とは捕獲の手順や車への動線、動物病院から戻った後の子猫の一時避難場所など、細かく相談&イメトレしました。捕獲当日まで母猫は姿を現すことがなく、
「もしかしたらどこかで飼われていた猫なのか?」
「今頃飼い主が必死になって探していたらどうしよう」
「本当にうちで保護して良いのか?」
など多くの葛藤がありましたが、ここまで来たら引き戻ることはできません。
ペットキャリーや洗濯ネット、おやつを準備し、車は前もってエンジンをかけて車内の温度を下げ、捕獲準備は万端です。
朝のキャットフードがもらえる時間になり、子猫はいつものように私たちの様子をうかがっては「ニャー(飯くれー)」と鳴いています。夫が手に持つのは美味しい美味しい焼き鰹(猫用)。絶品の香りに急ぎ足で近寄ってきた子猫は、夫の手から夢中で焼き鰹を頬張りはじめました。
半分ほど食べた頃でしょうか。食べるペースが落ち着いてきたのを見計らって、鰹で子猫をキャリーケースの中へ誘導しました。手こずった場合や逃げた場合のプランも想定していましたが、子猫は迷うことなくキャリーケースの中にイン。背後でキャリーケースの扉が閉まったにもかかわらず、子猫は美味しそうに焼き鰹を食べ続けていました。あっさり捕獲でき、このとき思ったことといえば、以下のとおり。
夫「焼き鰹おそるべし」
私「この子、穏やかな良い子に育つわ(早くも親ばか)」
おとなしくキャリーケースに入ってくれたため、計画通り素早く車の助手席に運び、扉のドアを閉めようとした次の瞬間。なんと、前方に子猫の母親、ハチワレの母猫が数日ぶりに現れました。ここで母猫が登場することは私も夫もいっさい想定できなかったため、突然のことに言葉を失い、しばらく身動きが取れずただただ母猫と子猫を交互に見ることしかできませんでした。あまりの緊急事態に私たちが動揺している間、子猫は焼き鰹を食べ終わり、自分が置かれた状況を察知するや否や甲高い声で鳴き始めました。すると子猫の声を聞きつけた母猫が鳴きながら車に接近し、私たちはいよいよパニック寸前。
しかし、ここで子猫を開放すれば、人間を警戒して人に寄りつかなくなるかもしれない。そうなれば外の世界で2匹の安全は約束されません。かといって、今の時点で母猫の捕獲は無理。
私たちは、鳴き続ける子猫と母猫に申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、車のドアを閉め、動物病院へ向かったのでした。
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