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服部幸先生のオンラインセミナー|第1回「猫とコロナと私」の視聴レポート

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2020年5月6日、「東京猫医療センター(以下、TFMC)」院長の服部幸先生による第1回オンラインセミナー『猫とコロナと私』を受講しました。

当日は約1時間30分にわたるライブ講義で700人~800人ほどの視聴者がいたそう。

猫の専門医として著名な活動をされている服部先生ですから、自宅から受講できると知ったら参加しない理由はありません。

本題のセミナーについてですが、全体とおして、視聴者に寄り添ったわかりやすい内容だったように感じます。

服部先生いわく、トピックに合わせたスライドをセミナー開始直前まで準備していたとのこと。

スライドは図表やイメージがとても見やすく、感覚的に話の内容を落とし込んでいくことができました。

今回のセミナーのトピックは、大きく分けて以下の4つです。

服部幸先生の第1回オンラインセミナー『猫とコロナと私』で取り上げられたトピック

  • 細菌とウイルスの違い
  • 猫腸コロナウイルスとFIP(猫伝染性腹膜炎)
  • 猫と新型コロナウイルスの関係
  • 猫のために飼い主ができること

セミナーで解説された詳しい内容は記載できませんが、全トピックのうち、個人的に「聞けて良かった」と感じたポイントを備忘録を兼ねてまとめていきます。

目次

聞けて良かった①細菌とウイルスの違い

「医者でも専門家でもないんだけど」と前置きしたうえで、細菌とウイルスがそもそもどういった性質を持つのか、わかりやすく解説されていました。

昨今、新型コロナウイルスの感染予防には手洗いの徹底が最重要とされていますが、これは手洗いにより新型コロナウイルスが持つ脂性の膜を壊せるからなんだそう。

新型コロナウイルスをはじめ、エンベロープという油膜を持つタイプのウイルスは、油膜が壊されることで感染力をなくす(=不活化する)そうです。

スライドを用いたさまざまなウイルスのサイズ比など、とても参考になりました。

聞けて良かった②FIP(猫伝染性腹膜炎)のお話

ボリュームがあり内容も深く、個人的には興味深いお話が多かったです。

猫腸コロナウイルスとFIPの基本的な知識から、感染リスクや発生リスク、検査や治療法、開発中の新薬などについて詳しく解説してくださりました。

数ある猫の伝染病のなかでも、こわいことで知られるFIP。

トピックの冒頭では、服部先生がFIPっていうのは、だいぶ個人的な考え入ってきますが、もっとも悪い病気のひとつかなと。極端な話、がんよりも悪い、非常に悪い病気です」と仰っていたことが印象に残っています。

トピック内では、FIPの発生率を「純血種と雑種」「単体飼育と複数飼育」「雄と雌」「1歳以上と1歳未満」など、さまざまな視点から解説。

FIPが発症した猫ちゃんの実際の画像(胸水の色、陰嚢の膨れ、虹彩の色の変化)は日ごろ見られない貴重なものでした。
※数値や画像はすべてTFMCの実際のデータに基づくものだそうです。

FIPの検査や治療法については、初耳となる貴重なお話もありました。

検査機関を通す猫のFIP検査は主に「抗体価検査」と「PCR検査」の2種類ですが、いずれも“絶対”がないものだそう。

特にFIPの抗体価検査で出される数値は会社によってばらつきがあり、さらにPCR検査では「陰性だから安心」とは言いきれないのが実情なようです。

このトピックでは、FIP検査に対する考え方が180度変わりました。FIPの検査は過大評価も過小評価もしてはならないという言葉が記憶に残っています。

治療法について印象的だったお話は、以下のとおり。

  • FIPは根本的な治療法がないこと
  • 海外にはあるけど日本で手に入らない薬があること
  • 日本では手に入らないけど獣医が輸入できる認可薬があること
  • 開発中の新薬のお話(未来の希望あり)

FIPは、現在闘病中の猫ちゃん、飼い主にとっては本当に辛い病気です。

お話のなかでは、新薬を使った猫の存命期間の解説などもありました。

もし本当に新薬が流通するようになれば、FIPに苦しむ多くの猫ちゃんと飼い主を救うことができるかもしれません。

近い未来の実現は難しいとしても、FIPの治療法や薬の確立を心から祈るばかりです。

なお、「こうすればFIPにならない(発症しない)」という方法は未だに見つかっていないそうです。

服部先生は、「漠然とした答えで申し訳ない」と前置きしつつ、FIPを発症させないためには、猫ちゃんにとってストレスのない環境で免疫力あげながら過ごすことが大事だと伝えてくださりました。

ここで個人的には、猫のストレスフリーな環境に正解はあるのだろうかという疑問が浮かびました。

一般的にいわれる「猫の快適な環境」を整えることは前提として、個体により異なるバックグラウンドや、生まれ持った性格、体質などを考慮するとストレスケアの仕方は大きく変わると考えています。

また、そのコにとっての最善と、人間にとっての最善がイコールでないことも、猫を飼育するうえでの難しい課題だと感じています。

各家庭で暮らす“そのコ”にとっての最善をどのように発見・実現していけばいいのか、まだまだ模索中です。

ストレスについては、そもそも猫のストレスって何ぞやという部分(ホルモンや神経の観点)や、ストレスによる身体的な変化、リスクについても勉強したいと感じました。

FIPは猫腸コロナウイルスの突然変異や、すでにFIPが発症している猫からの伝染により発症する病気です。

私たち飼い主がFIPについて正しい知識を深めることで守れる命もあるかもしれないと、あらためて実感させてもらえるトピックでした。

聞けて良かった③新型コロナウイルスと猫のお話

本セミナーの後半からは、本題ともいえる新型コロナウイルスのお話へ。

猛威をふるう新型コロナウイルスですが、猫にフォーカスした内容が中心で、情報の整理をさせていただけた印象です。

既知情報も多かったですが、個人的にはコロナウイルスの流行を動物と関連付けて時系列で解説してくださった部分がとても親切だと感じました。

2002年のSARS、2012年のMERS、そして2019年の新型コロナウイルスと、順をおって猫との関係を解説してくださりました。

新型コロナウイルスに感染した猫やネコ科動物の感染例を症状と合わせて解説していた点もわかりやすく、聞けて良かったと感じています。

このトピックの総括としては、新型コロナウイルスと猫について少しずつわかっていることもあるが、症状や抗体は未知数とのこと。

アメリカでの実験報告を交えて、日本国内の現状を以下のように伝えてくださりました。

  • 日本では、従来のPCR検査(猫腸コロナウイルスのもの)で猫の新型コロナウイルスの検出は不可
  • 日本では、動物の新型コロナウイルス検査はおこなわれていない(技術上は可能)
  • 新型コロナウイルスは人から猫に感染する可能性がある
  • 猫が新型コロナウイルスにかかった場合の治療法は確立していない
  • 猫が新型コロナウイルスに感染しても人間のように重篤化する可能性は低い
  • 猫から人間への感染報告はない(2020年5月6日時点)
  • 猫から猫へ感染する可能性がある

※上記は本記事で取り上げている2020年5月6日実施のセミナー内でまとめられた情報です。今後の研究によっては内容が覆る可能性もあります。最新の情報については信頼のおける研究機関や公的機関の公式HPをご参照ください。

新型コロナウイルスはまだまだ未知数であり、専門医でも対策が難しいのが現状のようです。

猫と新型コロナウイルスについては当初こそあまり示唆されていなかったものの、研究が進むとともにどんどん話が覆されていますよね。

ともに過ごす愛猫が一日でも長く安心安全に過ごせるよう、自分たちができる最善の選択をしていかなければと感じさせられました。

聞けて良かった④猫のために飼い主ができること

服部先生は、自分がウイルスを持っているかもという意識で猫との濃厚接触を避けることがとにかく重要だと仰っていました。

これには「うんうん」と頷くばかり。

感染の脅威から大切な人を守ることとも共通しますが、まずは移さない意識をひとりひとりが強く持つことが重要ですよね。

お話のなかでは、預け先を探しておくことの大切さや、もしも猫を外部へ預けなければいけなくなった場合の備えについて解説してくださりました。

人と接触せずに猫ちゃんの情報を伝達できるよう普段からスマホ内にメモしておくだとか、預け先に新型コロナウイルスを感染拡大させないようにするにはどうするべきかといったお話です。

このトピックでは、「知っているだけで1分後の自分の行動が変わるよな」「知らなかった、では遅いよな」とつくづく感じました。

ペットの預かり・預け入れについてのポイントは以下の東京都獣医師会サイトをご参照ください。

ペットを預ける側|準備のポイント

新型コロナウイルス感染症にかかってしまう前に済ませておくべきペットを預ける準備のポイント|公益社団法人 東京都獣医師会

ペットを預かる側|知っておきたいこと

新型コロナウイルスに感染した人が飼っているペットを預かるために知っておきたいこと|公益社団法人 東京都獣医師会

また、セミナー内でも紹介があったのですが、東京都や東京近郊の一部地域では、“新型コロナウイルスに感染した飼い主様のペットを救うプロジェクト #stayanicom ”が啓発されています。

ペット保険のアニコム損保で知られる、アニコムホールディングス株式会社様の取り組みです。

こうした取り組みをされている団体はまだまだ少ないですが、万が一の際は迷わず活用し、大切な猫ちゃんを自分たちの手で守っていかなければなりません。

StayAnicomプロジェクト

コロナ感染者のペットを無償でお預かりする「#StayAnicom」プロジェクトを始動!|アニコムホールディングス株式会社

おわりに

獣医師でTFMC院長を務める服部幸先生の、第1回オンラインセミナー『猫とコロナと私』を受講して、個人的に聞けて良かったポイントをまとめさせていただきました。

服部先生といえば猫にまつわる多くのメディアで目にしてきましたが、僭越ながら、実際にお話されている姿を見るのは初めてでした。

セミナーでは、ある程度知識がある方へも、そうでない方へも伝わりやすいように工夫されていたのが印象的です。

猫の専門医として一目おかれるだけあるなとあらためて感じました。

セミナーの締めでは、Stay safe. Stay with meという猫ちゃんのスライドとともに、服部先生より「人間がうつっていなければおうちの猫ちゃんにうつる可能性は低い」「人間が健康に、いつまでも猫と一緒におうちで」という言葉がありました。

最後のスライドを、私は「気をつけてね。でもずっとそばにいてね」という猫からのメッセージと捉えました(直訳とは異なりますが)。

そして無性に愛猫が恋しくなり、受講後は愛猫まっしぐらでモフらせていただくという……(笑)
同じような方、多かったのではないかなとおもいます。

ひとしきり愛猫をモフモフして抱っこしかけたところで、

濃厚接触だけは気をつけなきゃ

そういえば今日は玄関や手摺りを拭いていないな

と、自分にできること、猫のためにできることを改めて考える時間が生まれました。

寝ているバロン Photo by LOVE YOURSELF

私(@ly_shirahika)はもともと在宅ワークのため、コロナ禍においても日々のルーティンはそこまで変わらず、トラブルなく過ごせています。
愛猫バロン(短足マンチカン)もこの通り。

本セミナーはトピックを変えて定期的な開催が続いているので、気になる方はぜひ情報をチェックしてみてください。

服部幸先生、オンラインセミナー関係者の皆様、貴重なお時間をありがとうございました!

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この記事を書いた人

しらひかのアバター しらひか フリーライター/愛玩動物飼養管理士

晴れても雨でも曇っても、
“猫がいる”ただそれだけで幸せ。

・著者プロフィール
・愛猫プロフィール

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