2020年8月1日、「東京猫医療センター(以下、TFMC) 」で院長・獣医師を務める服部幸先生による、第4回オンラインセミナー「猫のしあわせトイレ生活」を受講しました。
無料講演された第1回に続き、二度目の無料セミナーです。
▼第1回Webセミナーの様子

ちなみに第2回、第3回は受講料(1,500円)がかかるとのことで申し込みは見送りました。
これまで開催されたWebセミナーのテーマは以下のとおりです。
第4回は約1時間30分にわたるライブ講義で、700名近い申込者がいたそうです。
猫の専門医として著名な活動をしている服部先生の登壇ですから、自宅から無料で受講できると知ったら、やはり参加しない理由はありません。
今回はスポンサーのライオン商事株式会社様(井上獣医師)による製品紹介もありました。
本題のセミナーについてですが、以前視聴した第1回と比較すると、事前に用意・配布されたスライドの内容が充実していたように感じます。
また、スライドを解説するだけの講義ではなく、スライドにプラスアルファの深い内容が盛り込まれていた印象です。
スライドにない部分の動画や解説も多く、やや専門的な内容も簡単な言葉でかみ砕いて解説してくださっていたので、とても聞きやすく理解しやすかったです。
今回のセミナーのトピックは、大きく分けて以下の4つ。
- 猫の膀胱炎の症状・原因・治療法
- 猫の膀胱炎「特発性膀胱炎」について分かってきていること
- 正常なトイレ行動・猫が好むトイレの定義
- 獣医師開発の猫トイレ・質疑応答
セミナーで解説された詳しい内容や資料は掲載できませんが、全トピックをとおして聞けて良かったポイントを、備忘録を兼ねてまとめていきます。
聞けて良かった①猫の膀胱炎の症状・原因・治療法

「猫がかかりやすい病気は?」と聞かれたら、腎不全や尿結石、歯周病をイメージする方は多いのではないでしょうか。
これらは猫がかかりやすい病気として広く知られていますが、セミナー内で解説された0歳~6歳の猫に多い病気(アニコム損害保険調べ)によると、下部尿路にまつわる疾患が占める割合が特に高いのだそう。
代表的な病気としては膀胱炎や尿石症、膀胱結石が挙げられるそうです。
猫の下部尿路疾患は昨今さまざまなかたちでアナウンスされているので、意識している飼い主も多いかもしれません。
しかし、一口に下部尿路疾患といってもその症状や病気はさまざまです。
下部尿路疾患にどのような種類の病気があり、どのような原因から発生してしまうのかを再確認できるトピックでした。
膀胱にできた尿石のレントゲン写真や膀胱腫瘍(移行上皮癌)のエコー写真はとても貴重なものでした。
本トピックでは、オス猫の泌尿器の模式図や、症状がよく似た疾患(膀胱炎、便秘、尿道閉塞など)の関連図を用いて、膀胱炎の原因や診断方法について解説されました。
猫58頭を対象にした疫学研究によりわかったリスクファクターなど、とても興味深かったです。
また、猫の膀胱炎について、直接的な原因が特定できない「特発性」と呼ばれる膀胱炎があることは初耳。
数ある膀胱炎のうち、原因の5割以上を特発性が占めるのだとか・・・・・・。
愛猫のトイレ事情は日ごろから注意深く見守っていますが、改めて、膀胱炎の症状や異変が出ていないか意識を高めるきっかけになりました。
聞けて良かった②猫の膀胱炎「特発性膀胱炎」について分かってきていること

猫の膀胱炎に関するメイントピックとして、特発性膀胱炎が取り上げられました。
とても印象に残ったのが、特発性膀胱炎は、膀胱ではなく精神+幼少期の環境(子宮内にいる時期含む)が問題らしいという部分。
下部尿路疾患がきっかけとなって早い最期を迎えてしまう猫ちゃんはたくさんいます。
そんな辛い現実の裏に猫ちゃんのストレスが大きく関わっているのだとすれば、猫との暮らしを見直さざるを得ません。
特発性膀胱炎はストレスが主な原因とされているそうですが、一口にストレスといっても生まれ持った性格や体質、生活習慣や住環境によってストレスの種類は無限です。
つまり、特発性膀胱炎の疑いがあったとしても、どのようなストレスから症状が出てしまっているのかは獣医師ですら見極めが難しいのだそうです。
さらには母猫の子宮にいるころ母猫にかかったストレスも間接的な要因になるといわれるようで、これは飼い主ですら把握できない部分です。
また、特発性膀胱炎の場合、症状があっても無治療のまま1~7日が経過すると、一度症状が治まってしまうそう。
完治したように見えても根本の原因が取り除かれていなければ、飼い主が気付いていないところで膀胱炎を再発してしまっているケースもあるそうです。
本トピックでは、特発性膀胱炎の主な治療法として、猫のストレス対処法が解説されました。
以下の4つのポイントごとに具体例があり、とても聞きやすかったです。
猫の特発性膀胱炎の治療としてできること
- 食事内容の見直し
- 飲水量の見直し
- ストレスの軽減
- トイレ環境の整備
獣医師の先生は、病院に訪れた猫ちゃんの状態や飼い主からのヒアリング、過去のデータや検査結果から総合的な診断を行っています。
もちろん、担当してくださる先生によって見解や治療方針に違いが見られることもあります。
ですが、すべてのケースに共通するミッションは、何らかの症状が出てから来院した猫ちゃんに、その時点で最善の治療を施すこと。
本セミナーで取り上げられた特発性膀胱炎は、獣医師ですら原因の特定が難しい疾患。
猫ちゃんと時間を共にする飼い主が、そのコの個性やそのコにとってのストレスを正確に把握し、膀胱炎の発症を未然に防ぐという意識が何より大切なのだと実感させられました。
聞けて良かった③正常なトイレ行動・猫が好むトイレの定義

セミナー後半からは、猫のトイレについてのトピックへ。
模範とされる猫のトイレ行動を記録した動画はとても貴重なものでした。
本能全開の野生猫ちゃんのトイレ行動に習って、自宅でも快適なトイレ環境を整えてあげたいなと感じさせられる内容でした。
本トピックでは、猫のトイレ行動として異常といわれる仕草やサイン、それにより起こる二次行動(多くは飼い主にとって不快となってしまう行動)、猫の理想のトイレ環境について解説されました。
愛猫のトイレ行動は日々観察しているので熟知していますが、セミナー内で解説された「トイレいやいやサイン」のいくつかに気になる内容がありました。
バロンの場合、砂をかかずにトイレのふちや壁、空中をかくのですが、どうもこれが「トイレいやいやサイン」の一つに当たるのです。
また、排泄物を隠さずにトイレから出てくることも「トイレいやいやサイン」の一つだそう。
今のところ、トイレ前後の異変や排泄障害、膀胱炎の症状は見られませんが、長い目で見ると今後が少々不安です。
しかし、セミナー内のチャット欄に流れる文章を読んでいると、同じような方がちらほらいる様子。
皆さんのお話によると、純血種やブリーダー出身の猫ちゃんは幼いころから正常なトイレ行動をせずに育ってきている背景があるようです。
これは私も以前からちょこちょこと耳にしていたので、同じような方が多くてホッとしました。
猫ちゃんについて解明されていることはまだまだ少ないですが、混血種と純血種で生態レベルで異なることってあるのでしょうか。
ミックスと純血の行動の違い(食事・排泄・睡眠・人間との意思疎通など、人と共存するうえで重要となる行動全般)については以前から特に関心が高い部分なので、可能ならばぜひ本セミナーで取り上げていただきたいなと思っています。
今回解説された猫の理想的なトイレ環境については、広く知られている情報と大きく相違ありませんでした。
猫内で派閥ができるほどの多頭飼育の場合は、頭数+1のトイレ数にこだわらず、グループ数+1のトイレ数を確保するのでも良いそう。
本トピックでは個人的に印象深かった部分は、以下になります。
猫は暗闇で目が見えるといわれるけど真っ暗状態では見えない
押入れの中など、完全に明かりがないような状態ではさすがの猫ちゃんも周りを見ることができないそうです。
よく考えれば「たしかに見えるわけないよな」と思えるけれど、案外盲点だったのでとても勉強になりました。
排泄物の臭いと模型なら、模型のほうを避ける習性があるらしい
よく、猫は香りでご飯を食べるといわれますよね。
ニオイにはとても敏感なイメージがあるので、トイレもニオイの有無で快適か不快かを判断しているのだと思っていました。
もちろん、臭いがついたトイレは猫にとって不快なのだろうけれど、目で見て「ウンチがある!オシッコの跡がある!」というほうが嫌がるというデータには、ちょっと驚きです。
猫にとって視覚効果って大事なんだなぁとこちらも勉強になりました。
聞けて良かった④獣医師開発の猫トイレ・質疑応答
メイントピック終了後、井上獣医師より、LION PETが販売する「獣医師開発猫トイレ」について紹介がありました。
獣医師開発猫トイレは、本セミナーで推奨されていた理想的な猫トイレの条件をほぼ網羅し、飼い主にもうれしい設計が盛りだくさん。
猫ちゃんと飼い主両方へやさしい設計で開発された猫トイレなのだそうです。
わが家は現在他メーカーのシステムトイレを愛用中で砂トイレの使用は検討していないのですが、バロンにとってストレスの少ないトイレを見つけるという意味では、今回紹介されていたような砂トイレも検討していこうかなという気持ちです。
セミナーのラストでは、講義前~講義中に寄せられた質問に対する質疑応答タイムがありました。(贅沢!)
ただ初めての試みだったのか、フリースタイルな質疑応答で曖昧な進行のまま終わりを迎えてしまった点は残念でした。
個人的には、数ある質問のなかでもよりニッチでニーズの高い質問を抜粋して回答・解説いただけると有益な時間になりそうだなと感じました。
質疑応答のみの回も検討中とのことで、ぜひ実現していただけたらなと思います。
セミナーに習って愛猫のトイレ環境を見直してみるとまさかの結果に!

今回のセミナーで解説された理想的な猫のトイレ環境を参考に、今日まで約1週間、バロンのトイレ環境を見直してみました。
すぐにできる改善として、わが家では猫砂(チップ)の量を大幅に増加。
トイレ本体の清掃後、いつもの2.5倍の猫砂を入れて様子を見始めたのですが、翌日から明らかにバロンの排泄行動に変化がありました。
これには私も夫も驚き。実際にわが家であった変化は次の2つです。
トイレに入ってから排泄するまでの時間が短くなった
猫砂を増量してから、おしっこポイントを決めるのもウンチポイントを決めるのも、格段に早くなりました。
おしっこについては、トイレに入って1~2歩ですぐに場所を決めている様子。
トイレに入って用を足し、砂かきを終えて出てくるまでにかかる時間は20秒前後です。
砂を増やす前まではおしっこポイントに迷う素振りが見られていて、倍以上の時間がかかっていました。
おしっこ後は相変わらずエア砂かきをしてトイレから出てきます。
おしっこは隠してくれませんが我が家はシステムトイレを使用しているので、衛生面などに関しては許容範囲です。
ウンチを隠してくれるようになった
猫砂の増量後の大きな変化が、しっかり砂をかいてウンチを隠してくれるようになったこと。
私が在宅中はバロンが砂をかけるより早くウンチを回収してしまうので隠す間もなかったかもしれませんが、回収を遅らせてみると、きちんとウンチを隠すように。
外出から帰ってきた際も高確率でウンチが砂に埋もれて隠れていました。
以前はウンチにまったくといっていいほど砂をかけてくれなかったので、帰宅するとウンチ臭が漂っていたり、バロンがトイレを我慢してしまったりしていました。
まだエア砂かきや壁をかく癖は抜けませんが、しっかり砂をかくという動作が増えてきたので、今後も砂の量を多めに維持して様子を見たいと思います。
バロンが愛用中の猫トイレ▽
おわりに
獣医師でTFMC院長を務める服部幸先生の、第4回オンラインセミナー『猫のしあわせトイレ生活』を受講して、個人的に聞けて良かったポイントをまとめさせていただきました。
今回はテーマから想定して「既知情報も多いかも」と思い参加させていただきました。
ですが、新情報や最新の研究データなどを知れただけでも、とても良質なオンラインセミナーだったように感じます。
このたびも、とても有意義な時間をありがとうございました。
本セミナーはトピックを変えて定期的に開催されています。気になる方はぜひ情報をチェックしてみてください。
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